The feel of a technology
それでも地球は
回っている
曲げない信念と、
刻んできた実験の歴史。
「それでも地球は回っている。」あまりにも有名なこの言葉を遺したのは、かの天文学者ガリレオ・ガリレイ。自ら製作した望遠鏡を駆使して観察を続け、そこから得た事実をもってコペルニクスが唱えた理論を証明してみせました。彼の残した成果は、現代に至る物理学、天文学の在り方を通じ、私たちが享受するものとなっています。しかし彼が生きた時代では、宗教的な圧力から告発を受けて幽閉される身となった話も誰もが知るところでしょう。現代でも認められるガリレオの凄さとは、自身の信念を最後までとことん貫き通した姿勢です。積み重ねた事象を既成概念に惑わされることなく分析し、本質を見出したことへの確信と自信。世間になんと言われようと、彼を突き動かしてやまなかった探究心について少し考えてみましょう。
「自分の目で見たことは、信じることができる。そしてそれは事実である。」ガリレオはその想いを胸に、試行錯誤を繰り返しました。理論や仮説をいつまでも頭の中に浮かべたままにしておくより、観測して確かめる。不確かなものが多い世の中で、揺るがない確固たる「答え」を手に入れるためには、行動から得られる「事実」が大事と考えたのです。その事実をひとつひとつ重ねていくことで、真実を見ることができるようになる。さらに、継続することで初めて理論の裏付けが生まれ、より進化していくことが可能になると信じたのでしょう。ガリレオは情熱をもって課題や謎と向き合い、自ら動くことによって、どこまでも世界を知ろうとしました。やがて科学の紐解き方を築き上げることとなったその愚直なまでのスタイルが、今もなお、こうして彼のことが語られる理由のひとつなのです。
ガリレオと重なるかのように、一条にも30年を超えて積み重ねてきた耐震実験の歴史があります。もちろん建築の世界にも、計算や縮小モデルでの検証によって導き出された様々な理論やそれらに基づいた法律が存在します。しかし、実大の建物で震動実験をしてみると想定していた通りにならないことが多々あるのです。私たちは実験を重ねるたびにそのことを思い知らされてきました。工法が異なれば言うまでもなく、金物・部品の形状や付け方が一つ違うだけでも結果が大きく変わることがあります。弱点を補強すれば、今度は他の部分に負荷がかかり、そこでまた一から検証をし直すといったことも実験ではよくあること。事前に机上の論理では成立していたとしても、です。
それに加えて、地震の揺れというのは実に複雑です。地震の強さを表す単位の一つに、建物に瞬間的にかかる力の大きさを表す「加速度(gal・ガル)」という数値があります。ちなみにこの「gal」という単位は、実はガリレオの名前に由来しています。例えば、車を運転する際にアクセルをゆっくり踏み込んだ時より、ググッと踏み込んで急発進させた時の方が身体をシートに押し付ける圧力が大きくなりますが、これが加速度の違いによるものです。耐震性を語る際によく登場する数値ですが、実はこの「加速度」も地震の一要素に過ぎず、その他にも「周期」「速度」「震動方向」など、『地震波』に含まれる様々な要素を検証する必要があります。それは地震が引き起こす被害の大小にも関わってきます。このことから一条は、ただ単純に「強く揺らすだけ」では家の強靭さを証明することにはならないと考え、この複雑で多様な『地震波』に対して耐えうる家であるかを日々検証しています。地震学が発展した今日でさえ、地震のメカニズムは完全に解明されてはおらず、未知の部分が多いのが現状。そのため、今までのデータにない新しい種類の地震が起きれば、その波に対して家が耐えることができるのか、新たに実験を行います。
まるでいたちごっこのようですが、常に家の性能をアップデートしていくことの難しさを知っているからこそ、継続することへの信念があるのです。それでも壁にぶつかることは日常茶飯事ですが、歩みを止めず挑戦を続けていくことこそ、私たちメーカーとしての責任と使命でもあります。確信が持てるその日まで、何度でも、何度でも。私たちの家の性能は、実験から得られた結果がすべて。その上で、今もなお、進化を続けているのです。