The feel of a technology
実りある時の
ために
その場所で、
最良の家をつくる。
良く知られている話ですが、ワインの味を左右するのが原料であるブドウ。収穫の良し悪しによっては市場価格にまで差が生まれます。ワイナリーは愛情を注いで育てたそのブドウから、いつの日か口にする誰かにとって最高の一杯になることを想像しながら大切に、そして繊細な心遣いを持ってワインを造るのでしょう。長い熟成を経たワインを目の前にした時、その年のブドウの質、造る時の手間や熟成している間に起きた世の中の歴史、そして造り手の愛が伝わってきます。あるいは、本場フランスであればボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュ地方などの「生産地」に思いを馳せることもあるでしょう。ワイン造りにおいてブドウが重要であるというお話をしましたが、ボトルに貼られているラベルに生産地が表示されていることからも分かるように、地域の土地、つまり地質と土壌によって育つブドウの品種と味が変わります。
特にブドウは、作物のなかでも土壌の影響を受けやすい果物。だからこそ、ワインには土地の個性が色濃く反映されるというわけです。そして、ワイン生産地の土壌の多くはカルシウムを多く含む石灰質や粘土質、そして火山岩質。他の農作物には適さないといわれることもある土地で、それぞれの条件に適したブドウが選ばれ、ワインが製造されています。また、気候や地形なども含めて、その土地が持つ個性のことをフランス語で「テロワール」と呼ぶこともあります。「土地」を意味するフランス語「terre」から派生した言葉ですが、こうした言葉があることからも、ワインを造るにあたって考えるべきは、土地にあわせて最適な品種のブドウを育てること。それが造り手にとっての大前提だということが分かります。
さて、一度グラスを置いて、家に目を向けてみましょう。ワイン造りのブドウと同じく、家を建てる際も土地の条件は様々ですが、どこであったとしてもそこに最良の家を建てたいと願うのは、誰もが思うことです。そして、その土地は何十年にもわたりそこに住む人々の暮らしを守り続けていくということも念頭に置いて考えなければなりません。今日より明日、明日より明後日。どのような日々を送っていきたいか。どのような理想を叶えていきたいか。未来像を描き、先を見越した上で今を見つめることが、家づくりにおいても大切です。
良質なブドウを育てるために、ワインの造り手がまずは土壌の吟味と整備を行うように、一条工務店でも家づくりを始める際にはその土地を支える地盤の健康診断を行い、家の足元を整備するところからスタートします。どんなに強い家をつくったとしても、それを支える足腰となる地盤が弱くては本末転倒です。土地のことを知り、土地に適した手を施すことで初めて、いい家は建つもの。基礎構造から家本来の骨格となる「見えないもの」にも決して手を抜かず、土地にあわせて最適な基礎を整え、家をつくる。それが私たちの貫いてきた姿勢です。出発点に時間と手間をかけるのは、それが将来、お客様にとってかけがえのない価値になるから。先々を見据えた今日の確かな一手が、やがて未来の財産となるのです。