The feel of a technology 使い込むほどに
年月を重ねることで、
魅力を増す住まい。
時は19世紀半ば。アメリカ西部に夢を求め、男たちはその命を賭けて我先にと一攫千金の旅へ出ました。そう、ゴールドラッシュの時代です。そんな激動の歴史の中で、壊れたり破れたりしない強靭なアイテムが、必然性を持ってこの世界に生まれてきました。それが「デニムジーンズ」です。今も象徴となっているファイブポケットを備えたデザインや、過酷な状況下での着用にも耐えうる強度は、新大陸にもたらされた夢から生まれた革新的な技術でした。
やがて世界は20世紀に入り、大戦を乗り越えたのちに冷戦下に突入。そこで生じた、西側の自由さと、東側の管理体制という大きな二分化。混沌とした時代背景で、出口の見えない悶々としたストレスは人々の反骨性を養いました。その流れは、ハリウッドスターやロックミュージシャンたちが自らの主張と意思を込めてデニムジーンズを着用するというスタイルとして表面化し、対抗文化を支持する多くの若者たちに影響を与えました。全米を巻き込んだうねりのような大きなムーブメントは「デニムジーンズ」というひとつの文化様式を形成。自由や反抗の象徴となり、今日ではファッションジャンルを確立するまでに至りました。その軌跡を、一体、黎明期当時の誰が想像したでしょうか。こうしてデニムジーンズは、とにかく「丈夫である」という基本的な考え方と性能のもとに生まれ、人々に受け入れられる素地を広げてきました。丈夫な生地、しっかりとした縫製。補強のために打ち付けられるリベット。作業着としての機能性を徹底して考え抜かれた末にたどり着いたものは、何度も洗濯を重ねてもクオリティを維持したままに着用できる「強さ」。耐久性と機能性を伴った基本理念が人々の心を捉え、徐々にその人気を広げていった結果が、今日までの歴史を作り上げる一つの要因となったのです。
それでは、家はどうでしょうか。家がファストファッションのように、その時の流行りをとらえて、短いサイクルで展開することを想定しているものならば、機能や耐久性はある程度妥協できるかもしれません。しかし、住まいはそもそも50年、60年、それ以上の長きに渡って暮らすもの。同様に考えることはできません。長い時間、しかも同じ場所で生活するにあたって、どのくらいの強度が必要となるのか。もしも地震などの自然災害が発生した際、どれほどの堅牢性を持っていれば大切な家族を守ることができるのか。年々変化する季節の寒暖の波やエネルギー問題に向き合い、快適さを保ちながらどのように対応していくのか。今、考えうるそのすべてを、家はあらかじめイメージして進化してきているのです。強さについてとことん考え抜き、日本特有の条件を備えたスタイルがここにあります。
一条工務店も、長く住むことを考慮した家づくりを行っています。時代の変化、社会の変化、そして家族構成の変化。それをいつでも受け止める家という存在は、確固たる性能に裏打ちされています。長く住める=基本性能を備えているから、という方程式によって。また、使う人にとってずっといい家であることで、愛情も芽生えてきます。それはまるで、いつも履いているデニムジーンズのように。基本性能さえあれば、多少幅のある暮らしをしても家は応えてくれるもの。そうして長く永く使い込んでいくことで、その場所やそこに住む人に、また新しい文化が育っていきます。デニムジーンズの基本的な様式がファッションジャンルとして置き換わったように、家も家の様式を持ちつつ、時間をかけて人それぞれのものになっていくのです。