vol.5 耐久性高性能が、ずっと続く、
という性能。
いいモノは、世代を超えて受け継がれていく。私たちがつくる家も、そうありたいと願っています。毎日を過ごす家が、いつも、誰にとってもいい家と感じられるようであれば、家は次の世代へとスムーズに継承されることでしょう。
一方で、「郊外に暮らす両親の実家を久しぶりに訪ねたとき、いたるところにほころびを感じて寂しくなりました。建てられた頃より、暑さ寒さもツラい気がします」というお客様のお話もよく伺います。
住み心地に問題があるならば修繕が必要ですが、相応の費用がかかることも容易に想像できます。
私たち一条工務店は、高性能な家づくりに力を注ぐと同時に、性能によってもたらされる快適や安心が“ずっと続くこと”も重要だと考えています。それは、新築時の快適性や省エネ性、耐震性といったストロングポイントが長年に渡って保たれるようにする工夫を、あらかじめ施しておくということです。
例えば、断熱性能。一条工務店の家では高性能ウレタンフォームといったプラスチック系断熱材を採用しています。開発者はその理由を「湿気や水分を吸収しにくく、断熱性能が劣化しにくい材質を選んだ結果。グラスウールなど繊維系の断熱材は、結露などを原因に湿気を含むことがある。すると水分を通して熱が伝わるようになり、断熱性が大幅に低下する。水分の重みで潰れれば、さらに大きな性能劣化が起こる」と説明します。
また、その施工精度にも秘密が。「高断熱のポイントは、いかに隙間なく断熱材を入れるか。一条では、自社グループ工場で製造した断熱材を、壁・床・天井のパネルへの取り付けまで工場内で行っている。これは断熱材をピッタリと納めて、高い断熱性能を確保するため。断熱材を建築現場で加工しながら入れる方法では、隙間ができやすく、むしろ断熱の弱点となってしまう。コンセントや構造用の金物を壁内に納めるために断熱材を切り欠く個所も、熱が失われる部分だが、工場生産で最小限にとどめられる。しかも、現場で廃棄する余分な切れ端も少なくなる」とメリットを説明します。
快適性を支える気密についてはどんな工夫があるのでしょう。「躯体の接合部に隙間をつくらないようにする気密パッキン材には、半独立気泡タイプのスポンジフォームを使用。これは適度な弾力と復元性があることが特徴で、木材の収縮による変化にも追従できる。もちろん熱や雨風などを再現する耐候性試験を行い、気密性能に影響が出ないと確認したものを採用している。断熱材と同じく、工場であらかじめ設置することで施工精度も確保し長期的な高気密性能を維持する」と語ります。
さらに、工場生産によるメリットがもう一つ。湿気による腐れやシロアリ被害から住まいを守る「防腐・防蟻処理」を、現場施工ではできない隅々まで施せることです。「地震による建物倒壊の分析から、新築時の耐震性を維持するには防腐・防蟻処理を含めた家全体での取り組みが必要であることに気付かされた。断熱材にも防蟻処理がされていないと、シロアリの食害に遭う可能性があることが分かってきた。さまざまな対象部材に対してそれぞれ最適な薬剤を選び、適材適所の処理をすることが必要だった」という言葉には、研究とその結果を商品にフィードバックする姿勢が表れています。
家の性能を保つには、外からの影響を最小限に留めることも大切です。水分や日光は生命にとっては大切な要素ですが、家にとっては外壁にダメージを与える大敵になりうるからです。
一条の「ハイドロテクトタイル」は劣化しにくいタイルに、汚れを太陽の光で分解し雨でその汚れを洗い流す光触媒技術をプラスした高耐久な外壁材。建てた時と同じ美しさを保つため、一般の外壁材でメンテナンスが定期的に必要なことと比べればライフサイクルコストは大幅に抑えられます。本来は外壁を傷める日光や雨水を、味方に転換する発想です。
壁パネルの下地材には押出製法という方法でつくられた密実な素材を使い、パネル間に充填するシーリング材も、国内最高レベルの製品を使用しています。開発者は「数十年という期間では、紫外線での変化をあらかじめ考えておくことが大切」と指摘します。「劣化は徐々に生じるもので、小さな破損をその都度発見して補修することは難しい。だからこそ重要なのは、万一外壁を通って通気層の中に水分が浸入しても、そこから先に湿気を通さず排水する手立てをつけておくこと。透湿防水シートを張り巡らせておくことで、水分が壁の内部に入らないようにするとともに、壁の接合部分でも特別な部材を使って透湿防水シートで確実に包むよう工夫している」といいます。
バルコニーなどの防水は、小型船舶でも使われているFRP防水を採用し、これも工場内で施工。継ぎ目のない一体成型ができ、補修もしやすいというメリットがあるためです。
一条工務店の家づくりでは、見えなくなる所をおろそかにすることはありません。むしろ「見えない所だからこそ、力を注ぎたい」という想いがあります。
いくら見栄えが良くても、中身がしっかりと、性能が長く保たれるようにつくられていなければ、快適性はどんどん損なわれていきます。時間が経つほど性能の差は開き、快適性の違いとして現れてくるのです。
また昨今では、建物の価値がコンディションではかられる時代になりつつあります。高い性能が長続きする家には、資産形成の面でも明らかな優位性があるといえます。
誰もがいつも快適で使いやすいと感じる家には、細かいノウハウの積み重ねがあります。そして、「数十年が経っても住み始めたときの性能と感動を味わい続けてほしい」という開発者の強い願いが、幾重にも込められているのです。