家の質 家の質

vol.4 夏の健康魔法瓶のような家と
ロスのない換気で、
夏の健康を守る。

「今年の夏は特に暑いですね」。そんな会話を、お客様と毎年しているような気がします。実際、気象庁が発表する統計によると、日本では1990年代から高温となる年が頻繁にあり、最高気温が35℃以上の猛暑日や、夜間の最低気温が25℃以上の熱帯夜も増えているそうです。寝苦しさのせいで睡眠の質が落ちれば、体力まで落ちるのは当然のこと。また睡眠中に脱水症状が起こる「夜間熱中症」にも注意が必要です。心身の健康を保つためには、家での暑さ対策がより大切になっているのです。

「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」という言葉をお聞きになったことがあるでしょう。兼好法師が『徒然草』で著したもので、住まいは高温多湿で耐え難い夏への対策を優先させてつくるべき、という内容です。通りや庭に打ち水をし、風鈴の音を聞きながら縁側で涼を感じるという光景も目に浮かびますが、現代の住宅を取り巻く環境は、先人が想定した工夫が通用しにくくなっています。ヒートアイランド現象で熱がこもる街の環境や、建物の周りに十分な庭がとれないこと、大気の汚れや防犯が気になって窓を開けっ放しにできないといった事情を考慮した暑さ対策が必要なのです。

高気密・高断熱の住まいは、夏の健康の強い味方。 高気密・高断熱の住まいは、夏の健康の強い味方。

単に室温を下げるだけなら、エアコン冷房を強めにすれば済むかもしれません。しかし、エアコンの風が当たる場所は肌寒いのに、冷風の届かないところは暑いなど、室温にムラが出ることが多く、家中を快適にするのは困難です。また、どんどんエアコンの設定温度を下げたり、寝る時につけっ放しにしたりすると身体が冷えてしまい、だるい日が続く……いわゆる「冷房病」「夏の冷え性」という新たな悩みも生まれました。

過酷な外気の影響を和らげ、家の内部は隅々まで快適さを保つためにはどうすればいいのか。そこに、一条工務店が「高気密・高断熱」にこだわる理由があります。私たちはよく高気密・高断熱の家を魔法瓶に例えます。外気温の影響を受けない構造(高断熱)で、しっかり蓋をしておけば(高気密)温度を保つ仕組みは住まいにも適用できます。快適かつ安定した室温で暮らすことは、私たちの健康にも好影響なことなのです。

とはいえ、外の空気を完全に遮断しては生活できません。高気密な住宅ほど、新鮮な空気を取り入れ、室内の汚れた空気を排出する「換気」の重要性は高まります。しかし高気密・高断熱の住まいにとって、換気口は唯一の“穴”といえるもの。普通に空気を出入りさせれば、外気の不快な熱気や湿気も一緒に入り込んでしまい、魔法瓶の機能は失われてしまいます。そこで一条がこだわるもう一つのポイントが「換気」です。

換気と、高気密と、高断熱。三位一体による快適を、すべてのお客様に。 換気と、高気密と、高断熱。三位一体による快適を、すべてのお客様に。

一条工務店では、高気密・高断熱の家に最適な換気設備として「ロスガード90」を開発し、全邸に標準搭載しています。単純に空気を出し入れするだけの換気ではなく、室内の温度と湿度を保ちながら24時間家全体の空気を入れ換える「熱交換換気」が可能なところが大きなポイント。高気密・高断熱性能と一体となり、快適な居住環境を守ります。しかしそのシステム完成までには、越えなければならない壁がありました。

「換気による温度ロスを防ぐには、排気によって本来捨てられる快適な温度をどれだけ室内に戻せるかが重要なのですが、その回収率を示す換気の“温度交換効率”は当時80%台が最高値。開発にあたっては、戸建注文住宅で業界初となる90%を目指しました」と開発担当者は語ります。しかし、温度と湿度の高い交換効率を得るために、熱交換素子と換気機器本体のサイズはどうしても大きくなります。「全館に送る大風量を部屋に分散させるとき、ダクトの長さや曲がり具合によって風量のバラツキが出てしまうという課題に直面しました。そこで風量調整ダンパーを新たに開発し、無数の条件に応じたダクトの試験を繰り返すなかで、独自の風量調整法を見出しました」。特許を取得したこの技術手法によって、効果的な換気が可能になったのです。

ここで再び大切なのは、住宅の気密と断熱の性能です。箱となる住宅がスカスカであったら、どれほど高性能な換気設備でも性能を十分に発揮できません。開発担当者は「気密性が悪いと、隙間から入る空気の影響で計画的な換気ができませんし、温湿度の調整機能を失います。また断熱性が悪いと外気温がどんどん部屋の中に伝わってしまい、換気設備にどれだけ優れた温度交換の性能があっても無意味になります」と強調します。

高い熱気と湿気が肌に絡みつくような、日本独特の暑さ。たとえ住まいの高性能化が進んでも、何か一つの性能に優れているだけでは快適な室内を保つことは困難でしょう。一条工務店は、高気密・高断熱と高性能な換気設備のベストマッチングにより性能をトータルで高め、エアコンの設定温度が28℃でも十分に涼しさを感じられる、身体に優しく、心地よい暮らしを目指しています。「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」と説いた兼好法師にも、一度その快適さを体験いただきたい住まいです。

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